「宇宙へ:Space Race〜冷戦と二人の天才」

 きのうNHK総合にて。制作BBC(2005年)。
 冒頭から、1944年9月8日、ベルギーの森を行くV2ロケット部隊の映像である。超釘付け。V2攻撃で瓦礫となったロンドンの一画、担架で運び出される人、軍用車に乗ってV2の跡を追うアメリカ軍少佐(ロバート・ステイバーといったか)、ソ連軍が発見したポーランドのV2残骸、ペーネミュンデの試験場と街、ノルトハウゼンの山腹のV2工場、ドーラ収容所……。だいたいネットで画像検索しつくしたつもりだったけど、まさかテレビの映像でこんなにたっぷりみれるとはなあ。話自体は的川泰宣著『月をめざした二人の科学者』(中公新書、2000年、ISBN:4121015665)でほとんどカバーされてるけど。録画できなかったのは悔しいが、見逃さなくてほんとよかった…。BBCの制作者はぜったいピンチョン読者を念頭においたはず。
 しかしV2はフォルムといい大きさといいフェティッシュな嗜好をを絶妙に刺激する。人つめこみたくなるのも分かる。内部のエンジンやらパイプやらがむき出しになって置かれているV2は、なんだか磔刑のキリストのようだし『BLAME!』のシボ初登場シーンみたく<少女+パイプ>のエロティシズムにも見えてくるしまあとにかくヤバイ。
 で、そのゴットフリートをつめこんだ00000号が宇宙を目指していて、黒の装置はアフターバーナー装置か放出カプセルかなんかだったんじゃないかと前々から気になっていたわけだけど、アメリカ軍に投降したフォン・ブラウンが重力を振りきるだけの加速度のロケットのその時点での実現可能性について熱弁をふるった(600kmを17分とかいってたか?)となると、やはりピンチョンがそういうこと考えてた可能性も十分ある。このへん参考にしながら00000号設計についての原文再検討しなきゃ。