『フレンチ・コネクション』(1971)と『ミュンヘン』感想④

昨日のNHK-BS2にて『フレンチ・コネクション』。冒頭のマルセイユの映像にガツンとやられる。またしてもアントニオーニの『さすらいの二人』(1974)の冒頭の北アフリカのシーンとダブる。あの色調。<世界>に肉薄していこうとするドキュメンタリーのようなカメラワーク。
以下、スピルバーグミュンヘン』のパンフレットからの引用。

レンズの選択は、70年代の気骨ある映画作りのスタイルに耳を傾けたいというスピルバーグの要望が大きな影響を与えた。カミンスキー[Janusz Kaminski:撮影監督]は言う。「どうしてもズーム・レンズを使いたいとスティーヴンが主張した。70年代映画はズーム・レンズを多用しており、ズームを使って撮影すると観客は当時の映画を見ている気分になるというのが彼の考えだった。アの時代の感じを創造するにはものすごい効果的な方法だね」。カミンスキーは『フレンチ・コネクション』(71)、『パララックス・ビュー』(74)、『コンドル』(75)などリアリスティックに見せるスリラーを『ミュンヘン』の撮影における参考にしたという。

スピルバーグカミンスキーが求めたのは、70年代のクラシックな妄想スリラーに現代的なエッジを加えたイメージだ。…ヴィジュアル・スタイルをさらに発展させる上で、カミンスキーは世界地図を通して物語を眺めた。彼は言う。「映画には8カ国が登場する。そこでそれぞれの国ごとに視点を変えることにした。絵の具を変えるみたいな感じ。微妙な差異だけど。この方法で、マルタとハンガリーで大部分撮影されたにもかかわらず、それぞれの国の個性が生まれた。…」。たとえばキプロスのシーンではパレットの色はエーゲ海のブルーへと変化する。そしてパリのシーンではパレットの色彩は雨空の雰囲気をたたえた、よりソフトな色合いになるという具合。…」


マルタにはぜひとも行って見たいもの。
ぼくは全然きづかなかったけど、『ミュンヘン』の各シーンには、フェリーニ監督『フェリーニのローマ』(72)、ロバート・マリガン監督『悪を呼ぶ少年』(72)、ロバート・レッドフォード主演『ホット・ロック』(72)、アラン・ドロン主演『暗殺者のメロディ』のポスターがちりばめられてるとのこと。やっぱり70年代フェチなんだな。
上の引用にあるパラノイアック・スリラー(妄想スリラーという訳語はどうかとw)については、フレドリック・ジェイムソンが"Postmodernism"(1991)で少し、”The Geopolitical aesthet:cinema and space in the world system”(1992)では”totality as conspirasy”の章で論じていた。<コントロール>とか<ガバンナンス>に関するまったく新しい事態についての美的な反応なのであると。前者はスパイ小説とサイバーパンクに、後者はピンチョンと『コンドル』について触れている。