ファウスト第二部読了、二人の手塚

 やっぱり手塚富雄訳はすばらしかった!
 先日の『三文オペラ』の演出をされた白井晃さんはファウストも手がけてたんだな(『ワルプルギスの音楽劇 FAUST《ファウスト》』2003.06@世田谷パブリックシアター)。ぜひとも観たかった。
 そして手塚治虫の『ネオ・ファウスト』の第二部。かかれていたらどんな展開になっただろう。ゲーテの想像力と手塚治虫の想像力はすごく親和性があって、手塚治虫の絵を思い浮かべながらファウストを読むととってもしっくりくるんだけど、手塚富雄の訳文は違和感なくそれにとけ込んでく。原文よりまろやかで、格調高いとまではいかなくても豊かで広がりのある文章になってるんじゃないかと思ってしまう。ドイツ語ってなかなかこうは訳せないものだ。
 ちなみにゲオルゲヘルダーリンとかは萩尾望都の絵付きで脳内再生w


憂い:
進もうか、引き返そうか、
その決心がその人にはつきません。
歩み出した道の途中で、
ためらって足踏みする。
だんだん深く道に迷い、
すべてのことを悪しざまに見、
自分にも人にも荷厄介になる。
息はしながら、窒息しかかり、
窒息せぬまでも、生気をなくし、
絶望もしないが、専念もできない。
あっちこっちへ転がりどおし、
やめるには未練が残り、とりかかるには気が進まぬ。
あきらめきって解放されたかと思うと、
あきらめきれずにくよくよする。
眠りは半分、気力は湧かず、東へも西へも動きが取れずに、
ただ地獄へ行く時を待つだけです。
SORGE:
Soll er gehen, soll er kommen?
Der Entschluß ist ihm genommen;
Auf gebahnten Weges Mitte
Wankt er tastend halbe Schritte.
Er verliert sich immer tiefer,
Siehet alle Dinge schiefer,
Sich und andre lästig drückend;
Atemholend und erstickend;
Nicht erstickt und ohne Leben,
Nicht verzweiflend, nicht ergeben.
So ein unaufhaltsam Rollen,
Schmerzlich Lassen, widrig Sollen,
Bald Befreien, bald Erdrücken,
Halber Schlaf und schlecht Erquicken
Heftet ihn an seine Stelle
Und bereitet ihn zur Hölle.