エルヴェ・ルソー『キリスト教思想』を駆け足で読了。原著は1973年か。クセジュではありがちなフランスへの偏りもなくとてもよくまとまっていた。西洋思想はキリスト教と切り離せないというのはこういうことだったのねと今さらながらいろいろ納得する。神学的な背景(とそこに賭けられてる世界観)を多少とも意識においておかないと哲学の核心にはなかなか到達できない。ベンヤミンのせむしの小人の比喩はマルクス主義についてのものだったけど、たとえば現象学についてもきっと同じことが言えるはずだ。
 とにかく古代ユダヤ教から現代まで150頁でこれだけ詳しく分かりやすくまとめれるというのに驚き、著者がとある企業の経済アナリストだというのでさらに驚く。変わった人というのはいるもんだ。

(追記)
 それと、近代以降のキリスト教思想を眺めていてどうしても思ってしまうのは、それが進歩的な立場からであれ保守的な立場からであれどことなく護教論的イデオロギー的ないかがわしさを消しきれないということ。で、そうすると、田川氏が「キリスト教の救済は宗教からの救済であった」ということを強調する重みとラディカルさが分かってくる。彼は筋が通っているなあ。これがまさにプロテスタント的立場の本領なんだろう。だからカトリック信者はどうしても違和感を感じるはずだ。