『白バラの祈り:ゾフィー・ショル、最後の日々』

 2005年/ドイツ/121分/Dolby SRD/アメリカン・ヴィスタ
 んー。今この映画を撮ることにどんな意味があったのか。とにかく演出が凡庸なのにおどろく。ひたすら時系列順に話が進む。場所の移動もない。ウルムでの子供時代とかヒットラー・ユーゲント時代のエピソードとか、セリフでいわせるだけじゃなくて映像で見せたら話が多角的になって面白くなったはずなのに。映像も退屈だ。
 冒頭、ビリー・ホリデーの"Sugar"のレコードを聞いてるシーンはとてもよかった。最後にかかったエラの"I'm making believe"も耳に優しい。ただ、野暮だなあと思いつつ、アメリカン・ポップスのスタンダードを今こんなふうに何の皮肉もなくノスタルジックな効果を狙って使ってしまっていいのか、という疑問もわく。スピルバーグが『ミュンヘン』のラストでWTCを使ってはっきりと同時代批評をしてみせたのとはちがって、どうしても古臭さを否めない。