建築について少々

 きのう本屋で建築関係の本をのぞく。SDライブラリーの『ルイス・カーン建築論集』(ISBN:4306061140)をぱらっとめくってみて分かった。根源的形態にむかうカーンの思考はほんとうにハイデガーそっくりだ。アメリカで受けたのはなぜだろうと頭をかしげる。人間の創造力と適応能力を信頼するリベラリズムこそハイデガーに根本的に欠けていたものだった。ぼくはそれをアメリカ文学で学んだのに。
 でもカーンはじつは『ラスベガス』のヴェンチューリを評価していた、というかかなり気にしていた、とマイ・アーキテクト」のカタログの対談(香山壽夫-隅研吾)にある。対話もずいぶんしたようだ。ちょっと拒否感が和らぐ。
 ぼくはいつからか現象学的な思考や言葉使いが苦手になってしまった。自分の成長を阻むものとして警戒するようになった。でもふと、フェノメナルな透明性というのが建築もふくめ現代美術全般に通底してるということにおもいあたってしまった。モダンのリシャッフリング、新しい調和の理念として。生活の奥底にある夢や願望として。夢のように深い経験の沃野への視界をひらくものとして。そういう角度からなら現象学にとりくんでみてもいいかも。