ゲストトーク@ヴォルフガング・ティルマンス展

tweakk2004-11-28

 いやーおもしろかった!松井みどりvs都築響一の対決は、オペラシティの公開トーク史上、いや美術鼎談史上もっとも見応えのあったプロレスのひとつとして、伝説として語り継がれていくんじゃなかろーか・笑。
 松井さんは、会場入りしたときはおずおずした眼鏡女学生的雰囲気を漂わせていて、うあー好感度UPー、でもおとなしそうだなーなんて思っていたのだが、都築氏の絶妙な煽りでトーク展開がエキサイトしていくと、だんだん天然な性格が全開になってきて大いに会場を沸かせていた。やーいいキャラだわ・笑。松井さんの話の内容は、『芸術が終わった後のアート』の論旨とほとんどおなじだったかな。1993年ごろから現代美術が、政治的・コンセプチュアルなものから、より日常的なもの、スナップショット的なもの、ナイーブなもの、若者のもつあいまいさ・両性具有的なものへの関心をよせる方向にぐっと舵をきったこと、ティスマンスはその流れのなかで登場し評価されたということ。それに対して都築氏は、おなじ写真を撮るものとして、そういう現代美術のコンテクストだけから解釈されることに、一貫して批判的な距離を示して見せていた。「始めに感じたナイーブな第一印象を大事にしてほしい、自分の感性に自信をもっていいんだよ」という最後の一言は、心にしみる。
 現代美術業界を相当批判して見せていた都築氏だけど、松井さんのことはけっこう好きなんじゃないかなという気がする。立ち位置が違うだけで、向かってる方向はおなじような気がするし、ティルマンスへのリスペクトはみんな共有していたし、なにしろ松井女史には天然の愛敬があるし・笑。佐々木氏の編集・デザインという側からの視点も含め、いろんな見かたが披露されて、とっても楽しい2時間でした。
 その後また会場をざっと一回り。松井さんが指摘してたけど、ティスマンスの写真はスナップショット的・即興的なところもあるが、構成的な要素がかなり強い(広重と北斎との共通性という話にはちょっと感動した)。でもそれをあんまり感じさせないところがいいな。あと、展覧会のタイトルになってる「Freischwimmer」の作品群は、構成的すぎて昨日はあんまりピンと来なかったけど(G.リヒターにもこんなのあった)、今日佐々木氏の話を聞いて、紙面構成という視点から、全体を眺め渡してみるとなるほどけっこう効いてるかもなーと思いなおしたり。2回来た展覧会はほんとにひさしぶり。忘れてた初心をおもいだしたきもち。