tweakk2004-06-04

[pynchon]
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今月21日、民間で開発した有人ロケットが世界で初めて宇宙空間を飛行する予定だそう。ロケット(というか飛行機に近い?)の名はSpace Ship One。開発したのはL.AにあるScaled Compositesという会社。開発者はその筋では有名らしいBurt Rutanという人。今回のチャレンジは、高度100kmの有人飛行を成功させさらに2週間以内にもう一度成功したチームに1000万ドルの賞金を出す、というX Prize財団が主催しているコンテストの一環。Space Ship Oneは優勝候補。高度15kmまで飛行機White Knightで運び、そこでシップが切り離され、ロケットエンジンで上昇。80秒後に燃料終了、3分強高度100kmを滑空したあと、20分かけて地上に戻るという。このチームへの資金の提供者はMicrosoftの共同創立者の一人Paul Allan。他のチームには、Google創立者Larry PageAmazon創立者Jeff Bezosも参加しているとのこと。
で、ぼくにとって興味深いのは、「高度100kmの地点では無重力状態となり、パイロットには、漆黒の空と、薄空色の線となった大気圏がみえるだろう」という一節。トマス・ピンチョンの「重力の虹」で、00000号とゴットフリートはもしかしたら宇宙をめがけて打ち上げられたのではないか、黒の装置とはそのための装置なんじゃないか、という仮説を心ひそかにいだいてるぼくは、しかし、いったい高度何kmからが宇宙空間なのかってことがずっと疑問だった。成層圏より上が宇宙なのだったら、その上限は高度55km付近らしいので、最高高度80kmのA4だったら十分到達する。いや、そういえば、ロケット開発史ではすでに1942年にペーネミュンデから「宇宙空間に到達した人類史上初の人工物」を打ち上げたと書かれているじゃんか。だとしたらやっぱ成層圏上限が宇宙空間のはじまりなのか?でも流星が燃えつきるのは中間層上限(95km付近)らしいし、その上のオーロラの出現する熱圏は95〜500kmの幅がある。通常スペースシャトルは高度300km付近、スプートニクは230km〜950kmの周回軌道にのったらしい。では高度80km付近ではまわりはどのように見えるか、ゴットフリートは00000号の<牝牛の窓>からどんな景色を見たのか。それで、今回の記事によれば100kmまで上がれば、漆黒の宇宙空間を頭上に、ブルーの大気を眼下に眺めながら航行できるということがはっきりした。だとすればゴットフリートはぎりぎりのところで漆黒の空間の中までには到達していないのか?そこは宇宙なの?ただし00000号の黒の装置がアフターバーナーとして機能するという可能性もあって、そうだとすると高度100kmを超えたかもしれない。戦争直後フォン・ブラウンの指導のもと、アメリカはホワイトサンズで改良されたA4はすでに高度213kmに達したというからまったく荒唐無稽な話でもないかも。ピンチョン自身は00000号の打ち上げ場面を、描写とも比喩ともつかぬ調子でこう書いている。「…それは明るい太陽と暗くなっていく空が広がるこの場所から、黄金色の、白さを増す領域へと、<重力>がしばし遠ざかった水の中のように静かになっていく領域へと、投影された誰かの、何かの影なのだ…...someone's something's shadow projected from out here in the bright sun and darkening sky into the regions of gold, of」whitening, of growing still as underwater as Gravity dips away briefly...」
そういえば「アミテージ・デュアルマトリクス」というアニメで、軌道エレベーターで戦闘するシーンがあったけど、そこから見える大気圏と宇宙空間の境の色がきれいだったなあ。ステーションからの眺めも。