Under the spreading chestnut tree
When I held you on my knee,
we were happy as can be
Under the spreading chestnut tree.


Under the spreading chestnut tree
I'll kiss you and you'll kiss me
Oh how happy we will be
Under the spreading chestnut tree

Under the spreading chestnut tree
I sold you and you sold me
There lie they, and here lie we
Under the spreading chestnut tree

ときには自由意志を働かせることで、自分憎悪の矛先をあちこちに変えられもした。悪夢にうなされて枕から頭を引き剥がすときの凶暴ともいえるほどの強引さで、ウィンストンはスクリーン上の顔から後ろの席にいる黒髪の娘へと憎悪の対象を急転換することに成功した。生々しく美しい幻覚が脳裏を掠める。ゴム製の棍棒でこの娘を殴り殺してやるのだ。裸にして柱に縛りつけ、聖セバスティアヌスのように身体中にたくさんの矢を突き刺してやる。陵辱し、絶頂に達した瞬間に喉を切り裂いてやる。

そればかりではない。いったいどうして彼女を憎んでいるのか、その理由が前よりもはっきりしてきた。憎んでいるのは彼女が若くて美しく、それでいて女を感じさせないからであり、一緒にベッドをともにしたいのだが、絶対にそうすることはないからであり、柔らかくしなやかなウェストは腕も回してと男を誘っているように見えながら、そこには純潔を戦闘的に象徴する不快極まる真紅の飾り帯が巻かれているだけだったからだ。

 晴れ 11℃/1℃

 魚沼産こがねもち米の切り餅がうまかった。醤油もいらずパクパク食べてしまう。夕方、すこし横になるつもりが深く眠ってしまった。起きると耳が痛いほどの静寂。夜中かと思ったらまだ6時だった。明日は職場に出る。

 年末年始は無性に映画が見たくなる。

ボーン・アイデンティティー

公開:2002年6月(日本2003年1月)、制作:米・ユニバーサル・ピクチャーズ、監督:ダグ・リーマン、脚本:トニー・ギルロイ、撮影:オリヴァー・ウッド、主演:マット・デイモンフランカ・ポテンテ


 レンタル期限ギリギリだった「ボーン・アイデンティティー」を、31日明け方にワイン飲みつつ見た。おもしろかった!やっぱりスパイもの、サスペンスものは楽しいなあ。2002年の作品としては筋立てが古臭い(良くいえば古典的)とおもっていたら、原作は冷戦期のスパイ小説だったのね。ロバート・ラドラムジェイソン・ボーン・トリロジー。1作目は1980年か。ボーンってbornかとずっと思っていた。「ダイ・ハード」みたいなバランスとれたいい娯楽作品だとおもった。文学的・思想的な深みや新しさはないけど(英語のwikipediaで引用されてた批評家の数少ない否定的評価として"banal"というのがあったがそのとおり。でも何が悪い)、筋は飽きさせなかったし、演出に手抜きはなく、映像もよかった。ラストシーンもぐっと来た。リーマン監督はいろいろこだわって予算オーバー、完成延期でユニバーサルと再三揉めたらしい。デイモンが監督に味方したというのもよい。好きだなこの監督。

グラン・トリノ

公開:2008年12月(日本2009年4月)、配給:米・ワーナー・ブラザーズ、監督:クリント・イーストウッド、脚本:ニック・シェンク、撮影:トム・スターン、主演:クリント・イーストウッド


 昼に鑑賞。お約束の連続だけどもたしかにうまい。70年前後くらいの映画の完成度と落ち着きを思わせる。リバタリアン頑固ジジイが中国のオバハンたちに食い物で篭絡されるとこが最高である。最後はびっくりした。泣いた。とはいえ佐藤亜紀の「グラン・トリノが本年度のベストか。確かにそうには違いないんだが、全く以って妥当そのものであり、他に選びようはないんだが、何かつまらんのお」というつぶやきには自分も賛成。それから、これが映画じゃなきゃだめだったかというとやや疑問がある。小説でもマンガでも十分にいけそうだ。ま、いいんだけど。エンドロールが流れる海辺の道路の風景がいちばん映画的には好きだったかもしれない。


追記:
 奥さんが神父にあれほど頼んでいたのは、ウォルトが苦しんでいたことを知っていたからなんだな。思い出してまたじわっときた。